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藤井七段の強さの秘密について考えてみた話(3)

藤井七段の強さの秘密について考えてみた話(3)です。

 

 

AIと将棋ソフト

 藤井七段に関しては、(1)の記事でも触れた、棋聖戦第2局の「3一銀」を、AIもすぐには良い手だと分からなかったことをもって、AIを越えたといった論調も見られるようです。

 

yokositu.hatenablog.com

 

ところで、AIという言葉が出て来ましたが、人間と同等以上の思考能力を持ったシステムが、たまたま将棋をやっているという事では全くなく、以前から将棋ソフトと呼んでいたものの高性能版を、最近のAIブームのせいか、いつの間にかAIと呼ぶようになっているという事のようです。

この記事では、将棋AIと呼ぶことにします。

将棋AI

 将棋AIは、基本的に、人間が将棋の指し手を考える過程を、プログラムにする形で作られて来たようです。

そのため、その初期の頃には、将棋の強い人が作った将棋AIが強いといった事が普通でした。

そのプログラムの内容ですが、ポイントとなる点は色々とある訳ですが、最も肝となるのは、その時々の局面を評価する基準のようです。
ある局面で、先手後手のどちらが有利か評価出来れば、その先の手筋に関しても同様に評価して、良い手かどうか判断が出来ることになる訳です。

その評価基準を、定跡や詰将棋のデータや、過去の棋譜も参考にして作り出し、各局面での指し手の優劣を決定していくというのが、プログラムの大まかな流れになるようです。
勿論、その中に、個々の作者のアプローチの違いが特色となって表れてくる訳ですが。

つまり、将棋AIにも、人間が将棋を指す上で、常識ともなっている、駒の軽重、損得、役割といった考え方が反映されている訳です。

機械学習の導入

 そうは言っても、膨大な量の過去の棋譜は、人力で扱いきれる訳では無く、将棋AIそのものに調べさせよう(機械学習)という流れになりました。

私的には、この辺りから若干AIらしくなってきたのかなと思っているのですが。

ともあれ、機械学習により一気に性能が向上し、プロと互角か、場合によっては凌駕するところまで進化することになりました。

駒の軽重、損得、役割といった考え方を共通基盤として持った上で、コンピューター特有の、疲れを知らない力業で学習をする訳ですから、プロと同等かそれ以上になるというのもむべなるかなという気はしますが。

AIを越えた?

 以上の事と、前回の記事で考えた、藤井七段の強さの秘密かもしれないものを考え合わせると、将棋AIが「3一銀」を読み切れなかったのもしようがないという事になりそうです。

 

yokositu.hatenablog.com

 

上に書いたように、現在のトップレベルの将棋AIは、多くのプロ棋士やアマチュアの強豪の常識をベースに、コンピュータ特有の圧倒的経験値を組み合わせたものと言ってもいいものである訳です。

そうである限り、駒の軽重、損得、役割と言った考え方に捕らわれずに考え出されたと思われる、藤井七段の差し手を、普通には導き出すことは出来なかったという事ではないでしょうか。

「3一銀」を見て驚いた、プロ棋士と同じだという事です。

そういう意味では、AIを越えたと言ってもいいのかもしれません。

というよりも、将棋AIとは局面の評価基準がそもそも違う、といった方が良いのかもしれません。藤井七段は、同じ盤面で、違うものを見ているのかもしれません。

棋聖戦第二局後に渡辺棋聖がブログに書いた、「いつ不利になったのか分からないまま、気が付いたら敗勢、という将棋でした。」という言葉に、その一端が現れているように思うのですが。


 多少、将棋AIを単純化しすぎたかもしれませんが、一応AI越えに関しても、結論めいたところまで来ました。
次回は、もう少し将棋AIとの関係について考えてみたいと思います。


ではでは