最古の壁画について考えた話です。
言語能力の指標
前回の記事では、先史時代の壁画と言語能力について書きました。
先史時代の壁画を、その描かれたと考えられる年代に沿って見てみると、描き方が写実的なものから次第に線画的なものへと変化しているように見えること。
その事と、言語能力による右脳の視覚的記憶能力の抑制という仮説を合わせて考えると、壁画が、それを描いた時代の言語能力の発達程度に対する指標になるのではないかという話でした。
最古の壁画
従来、先史時代の壁画で最古のものは、前回の記事でも取り上げた、ショーヴェ洞窟を始めとする約4万年前ごろのものと考えられてきました。
そしてこのことは、アフリカから移動して来たホモ・サピエンスであるクロマニヨン人がヨーロッパにやって来た年代とも矛盾せず、これらの壁画はクロマニヨン人が描いたと考えられています。
ところが、研究によりスペインのラパシエガ洞窟、マルトラビエソ洞窟、アルタレス洞窟の壁画が最古のもので、約6万4千年前のものであるとされました。
この時代のヨーロッパはネアンデルタール人が優勢であり、これらの壁画を描いたのは彼らであると考えられています。
壁画を見てみると
最古のうちの一つ、ラパシエガ洞窟の壁画は次のようなものです。
引用元:【解説】世界最古の洞窟壁画、なぜ衝撃的なのか? | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
何か描かれているように見えますが、はっきりしないので模写を見てみます。
引用元:同上
これは確かに描かれたものと言えそうです。
明らかに動物の一部が描かれているように見えます。
写実的なところは全くなく、線画と言って良いでしょう。
言語能力は高かった?
ホモ・サピエンスの描いた壁画による言語能力に対する指標を、ネアンデルタール人に適応可能かという問題もありますが、両者の交配も可能だったようなので、それほど違いは無かったと考えることにします。
そうすると、上の壁画からは、線画であるという事で、その時点ですでにネアンデルタール人の言語能力が高かった可能性を示しているという事になります。
その後クロマニヨン人がヨーロッパにやって来るのですが、その時のクロマニヨン人の言語能力は、ショーヴェ洞窟などの壁画によれば、高くなかったという事になります。
つまり、両者が出会った時には、ネアンデルタール人の方が高い言語能力を有していたと考えられるわけです。
勿論、両者の言葉が通じたわけでは無かったでしょうが。
常にホモ・サピエンスが先頭を走っていたわけでは無さそうです。
ではでは