アリストテレスの根拠のない説について考えた話です。
前回の話
前回の話は、自然発生説とパスツールの実験についてでした。
パスツールによって行われた、「白鳥の首フラスコ」と呼ばれる器具を使った巧妙な実験によって、自然発生説が否定されたと考えられている事。
見方によっては、完全に自然発生説が否定されたと言えないのではないか、という話でした。
その自然発生説を唱えたのはアリストテレスでした。
万能型の天才
良く知られているようにアリストテレスは、前384年 - 前322年に生きていた、古代ギリシャの哲学者です。
哲学者といっても、現代の我々が哲学者と聞いて、思い浮かぶような学者ではありません。
当時の哲学は、今の哲学と違って、今でいうところの科学全般に相当するような、総合的な学問を指すものでした。
その生物学的な方面の成果の一つが「自然発生説」な訳です。
その他に、よく知られているものに、地球を中心とする天動説が有ります。
いわゆる、万能型の天才だったのでしょう。
気になる点もある
天才であったのは確か出だと思うのですが、少し首を傾げたくなる点もないわけではないのです。
特に現代で言うところの理科系的な分野では、基本的には観察などにより現実の事象を集めて、それに基づいて論を展開しています。
ところが、最も根本的な部分になると、全く根拠のない結論が出て来るのです。
例えば、生物学的な面では、個々の生物の構造などの詳細な観察(解剖なども行ったようです)を基にしています。
それにもかかわらず、その根本的なところで「自然発生説」というなんの根拠もないものを持ち出すのです。
天文学においては、観測されている恒星と惑星の運動を説明するものとして、地球を中心に据えた「天動説」を唱えています。
これは、地球が中心には無いという現実とはことなっていますが、恒星と惑星の動きを説明するものとしては問題の無いものでした。
ところがここにも最後になって、これらの星々を外側から動かす「不動の動者」というものが突然出て来るのです。
なぜそんなものを
これらの根拠のない考えについては、そこまで科学が発展していなかった時代の限界なのかなと思っていました。
が、最近になって違う解釈も出来るんじゃないかと思い始めました。
全く根拠のない説という事は、裏打ちとなる現実の事象が集められなかったという事になります。
泥の中からウナギやエビが生まれて来たのを見ることや、星を動かしている「不動の動者」を目撃する事はなかったのです。
であるならば、それ以外の現実の事象に基づく推論だけで止めて、根拠のない説には触れなくても問題は無かったはずです。
それでもあえてそんな説を入れたのは、彼からの宿題だったのではないかと思うのです。
基になる現実の事象がない以上、彼にも答えは見つからなかったのです。
その上で妄想とも言える説を提示することで、問題点を浮き彫りにしたのではないでしょうか。
神などを持ちだしてもよさそうですが、そんなものは出て来ません。
やはり自分が分からなかったものについて考えてほしかったのではないでしょうか。
その後にキリスト教により神が持ち出され権威化されたのは、誤算だったかもしれません。
ではでは