鳥獣戯画について考えた話です。
全部で4巻
テレビで『鳥獣戯画』の番組を見ました。
『鳥獣戯画』といえば、どうしても次のような絵面が有名で、その話になりがちです。
どうして動物を擬人化しているのか、何を表しているのか、何のために作られたのかといった話です。
『鳥獣戯画』は全4巻からなっていて、上の絵はそのうちの甲巻と呼ばれている巻の内容となるのですが、今回見た番組は、珍しく全巻を紹介するものでした。
全巻を通して観たのは初めてだったのですが、意外と統一感が無い事に驚きました。
全巻、上の絵のようなものが続いているのかと思っていました。
調べてみると
調べてみると、やはり個別に作られたものが纏められたものだと考えられているようです。
甲巻では、様々な遊興や法要などのどちらかといえば庶民的な場面が、擬人化された動物で描かれています。
乙巻は、牛や馬の実在する動物と、龍や獏などの空想上の生き物が混じって描かれます。
さらに丙巻については、元々前半部分と後半部分が、一枚の紙の裏表だった事が判明しています。
加えて、後半部分については、甲巻の動物の遊戯を手本に描かれたとも考えられているようです。
また、単に統一感がないだけではなく、丁巻は素人目にも明らかに違う人物が描いたように見えました。
こういった事から、明らかに丙、丁巻については後から一緒にされたもののように思えます。
甲、乙巻で考える
甲、乙巻に関しては、描かれている内容は違いますが、作者が違うかと言われると、素人目には良く分からないといったところが正直なところでしょうか。
という事で、以下ではこの2巻が元々の物だったとして考えたいと思います。
後、大きな特長として、これらにはストーリーが無い事が挙げられます。
普通絵巻物と言えば、『源氏物語絵巻』、『伴大納言絵巻』や縁起物等のように、何らかのストーリーがあって、それに従って絵が描かれます。
加えて、その絵を説明するための詞書が有るのですが、『鳥獣戯画』には詞書などは一切ありません。
何のためのものだったのか
以上のような点と、絵巻を入手するのにそれなりの財力が必要な事から考えると、貴族階級の子弟のための絵本のようなものだったとすると、説明がつくように思います。
甲巻の動物の擬人化は、現代の絵本でも良く見られる手法です。
庶民的な場面しか描かれていないのも、そういったものに触れる事のない立場の子供のためのものと考えられそうです。
乙巻については、そのものズバリ動物図鑑だと考えられます。
牛、馬、犬などのごく普通の動物が描かれているのも、そういったものにあまり触れる事のない身分の子供のためと考えれば、納得出来そうです。
いずれも詞書が無い事から、言葉が分からない年齢の子供向けの物だったとも考えられます。
乳母などが説明しながら見たのかもしれません。
巻物という形態と、寺院に伝わっている事が、話をややこしくしているような気がします。
ではでは